TOP > メンバー > アライアンスチームインタビュー【株式会社KOTOBUKI 庭瀬寿洋氏】

アライアンスチームインタビュー【株式会社KOTOBUKI 庭瀬寿洋氏】

庭瀬寿洋:株式会社KOTOBUKI 代表取締役、一級建築士

防音・音響事業を始めたきっかけ

_MG_7663もともと、当社は父がやっていた解体工事を中心とする建築会社で、ちょうどリーマンショック後の2009年に、私があとを継ぐことになりました。その頃、リーマンショックを境に景気が悪くなる一方で、会社をつぶさないためにも何か他の柱となる事業が欲しいと頭を悩ませていました。
今の事業である建築の仕事で何か新しいことができないかと考えていた時に、突然、趣味のオーディオルームが結びついたんです。まさに、神がおりてきたような感じでした。
防音工事などやったことがなかったのですが、勉強すればいい。思いついて決意するまでに、20分もかかりませんでした。
その後、税理士の水野先生にご相談してお墨付きもいただき、事業を立ち上げることになりました。私が社長をついで、約2ヶ月後のことでした。

 

音に合わせて調整が変わる

_MG_8003日本で防音工事は大手などが手がけていますが、まだまだやっている会社は少ない。特に、防音を楽器の種類や音楽のジャンルに合わせてできるところはありません。
私は自分ではドラムを演奏しますが、ピアノや弦楽器、管楽器は演奏できません。でも、やっていなくてもツボはわかっています。それは、長年趣味で圧倒的な時間を費やして音を聴きこんできて、耳ができているから。たとえばクラッシックなら、ねばっこい音の瞬間があるとか、ドラムはざくっとして響くとか、楽器によって、調整しなければならない部分が違うんです。
そこまでを考えて調整した防音音響工事ができるのが、他では真似できない当社の強みだと思っています。

 

お客様との奇跡的な出会い

防音工事の記念すべき1作目となったのは、名古屋の有名なライブハウス「ボトムライン」様の防音工事でした。
きっかけは、中日新聞に出した当社の防音室工事の広告です。ビルテナントにスタジオ新設の予定があり、既存の防音工事に満足していなかったオーナー様が、たまたま広告を見て電話を下さったんです。
広告を出したはいいが、うちの実績はゼロです。すぐにうかがってお話をさせていただいた時に、実績がないことを正直に言うと案の定驚かれましたが、結果、お仕事の依頼をいただくことに。この事業を音楽が好きでやっているということに、可能性を感じてくださってのことでした。この出会いとオーナー様の決断には、本当に感謝しています。
「音の良いスタジオ」という課題をいただいた初めての防音工事は非常に勉強になりましたし、何度か改善工事をさせていただく中で、ノウハウも確立することができました。

 

次の一手

_MG_7804防音工事は一作目を皮切りに、個人住宅から喫茶店、音楽教室など幅広くご依頼をいただけるようになりました。今、取り組んでいるのは、飛行機を上回るほどの大騒音でクレームの出ている工場のタービン音をどう止めるかという非常に難しいご依頼です。

さらに音響のほうでは、低周波を吸ってクリアな音を実現する音響パネル製品「音快速」を開発し、音響のプロや評論家の方々から高い評価をいただいています。
音響防音事業のノウハウ蓄積から生まれたこの製品は、おかげさまで「オーディオアクセサリー2016」ルームチューニング部門銘記賞やロサンゼルスAV Showroomsにて金賞を受賞し、業界で大きく注目されています。
今後は設計施工はもちろん、開発製品の販売展開にも力をいれていこうと思っています。

 

新賃貸について

建築全般に言えると思うのですが、ネットで情報がたくさん手に入るようになり、今後ますます人々の嗜好が多種多様になることで、趣味の家とか、自然素材の家といった多様化が進んでいくと思います。
その中でも、続くものとなくなる物があって、新しいけれど実は伝統に根ざしていたり、本来当たり前のことだったりするものが残っていくような気がしています。
音響で言うなら、40年前のスピーカーが今のものよりも素晴らしい音がするだとか、最先端の技術に昔のものが生かされているといったようなことです。

住まいは、住み心地や、住む人のことを考えたものでなければいけません。それは施主様主体にすべて作ればいいというものでもなく、あきない家、居心地のよい家を作るということ。
当たり前のことですが、作り手の魂が存在として出ているもの、住む方のために考えつくされた思いが見えてくるものが、素晴らしい住まいであり、これからの賃貸物件にも求められているものだと思います。

 

_MG_7761