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「丸山ハイツ」オーナーインタビュー【横浜市・押尾様】

当初はマンション建て替えを検討

押尾:このマンションは、建ててから今年で44年目になります。賃貸マンションは一般的には50年ほどで建て替えが必要と言われます。築40年を過ぎて、水道や排水管、ガス管、屋上や壁の防水など、インフラのあちこちで問題が出てきていて、建て替えを考え始めました。

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建て替えをするなら、まず今のものを取り壊す必要があります。鉄筋コンクリート造りの建物ですし、見積もりをとるとそれだけで6千万~8千万もの費用がかかることがわかりました。さらに、傾斜地に建っているために、擁壁を作るのに3千万が必要で、都合1億あまりのお金がかかってしまいます。
しかも、建蔽率の変更で、今ある19室から、最大でも12室までの建物しか建たないこともわかりました。

なぜリノベーションすることになったのか

押尾:3.11の震災(東日本大震災)があった時、うちのマンションでは思いのほか、被害が少なくて済みました。揺れを感知してガスが止まってしまったのが、4階で4室中2室、3階は1室のみ。その時、うちのマンションは案外丈夫だなと思ったのです。
そこで、ホームインスペクター(建物調査の専門家)に細かい建物診断と耐震調査をしてもらったところ、築40年以上の建物ではありますが、現在の耐震基準に問題がないということがわかりました。壁構造というところと大手建設会社の施工だったのが幸いしたようです。

取り壊して1億ものお金をかけても、回収も難しいでしょうし、第一この大きなコンクリートの建物を取り壊して処分すること自体、エコじゃない。
そこで、建物はそのままにリノベーションするという方向で、再検討することにしました。

横浜で第1号の決済物件に

押尾:ところが、リノベーション案に変更して、またしても問題がでてきてしまいました。
当初借り入れを了承してくれていた銀行から、「リノベーションだと建物に担保がつけられないので、お金は貸せない」と言ってきたのです。

その頃は、他の銀行でもリノベーション向けの貸付をこれから始めようかという時期で、いくつか立ち上げている銀行もあったのですが、石川さんは銀行からの紹介だったこともあり、苦肉の策で支店決済での借り入れが決まりました。
借り入れは決まったものの、私としては本意ではありませんでした。これから事業再生のリノベーションを考えたいという人は絶対出るはずで、今後のことを考えたら、銀行として旧態依然の基準で判断するのはおかしいと思っていたからです。
そこで、石川さんにもご尽力いただいて、最終的にはその銀行で初の事業再生リノベーションの案件として、銀行の本店での決済をいただくことができました。

退居から着工、竣工までスムーズに進行

HJ20170331-0067石川:丸山ハイツは、まずインフラ部分の全面的な改修工事が必要でした。そのため、ご入居者様全員に退居していただく必要があり、その引っ越しの交渉からお手伝いをさせていただきました。
通常の場合、退居というとお金でもめたり、長期化したりするケースが多いのですが、当時お住まいになっていた12世帯の方々は、比較的スムーズに、7カ月ほどで退去を完了することができました。
引っ越しのお世話の際に入居者様から聞かれたのは、オーナー様に対する感謝の言葉。これもオーナー様のお人柄あってのことだったと思います。

退居でしばらく時間があったことで、事前に打ち合わせができたところも幸いし、着工からもスムーズに進めることができたので、8月に着工、翌年の2~3月の引っ越しシーズンに何とか間に合わせることができました。

同じ間取りは一つもない、全部が違う仕上げのお部屋へ

石川:リノベーションは、まず企画からスタートしました。
各室の内装は4つのデザイン、「ブルックリン」「シャビーシック」「ナチュラル」「ミッドセンチュリー」で仕上げ、19室それぞれが違う間取りのお部屋になっています。新築に勝つために、「カッコよさ」を追求することで、事業性のよい物件にすることができました。

ハード面では、神奈川で100年の歴史のある松尾工務店さん、内装はプリマファクトリー、LAN設計、eims、客付けはリノベ百貨店で担当してもらい、それぞれが横一列に並んだ立場で、チームワークで取り組みました。
また、オーナー様にも2回に一度の割合で会議に参加していただき、情報を共有することで、よりスムーズに良いものを創り上げることができました。
何かとタテ割りの建築業界にあって、こうした横並びの進め方は今までなかったのではないかと思います。

「住まい手目線」の発想からのプラン

押尾:石川さんからのプランを見てまず思ったのは、今までの建築業界のやり方と全く違っているなということでした。
今までの賃貸物件といえば、違いは角部屋かそうでないかぐらい、当たり障りのない間取りで、壁紙から何からすべて統一されているのが当たり前です。
全室違う内装というのは、実際にはお金や手間に思っているほどの違いはなくて、いちばんの違いは頭で考える労力が要るところ。建てる側からしたら面倒くさいことだから、業界はやらないんです。

石川:それって、完全に作る側の都合ですよね。オーナーは常日頃から住まい手目線を考えられていて、だからこそ、前の入居者様にも慕われていらっしゃった。そんな押尾様だから、住まい手目線を大事にしたリノベーションをご理解下さったんですね。

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リノベーションを進めていく中で不安に思ったこと

石川:工程管理から施工の精度チェック、予算管理まで、オーナー様にCMをすべてお任せいただいて、責任の重い立場でしたが、オーナー様からご信頼いただけていると感じました。

押尾:入居者を入れるということに関しては、大手より石川さんのほうが専門ですから。通常は大手に任せたら安心と思うかもしれませんが、私としては、逆に大手の建築会社に任せるほうが不安でした。大手は専門家ではないし、客付けも不動産屋に任せてしまうのに対し、客付けのことからすべてをお任せできました。
ただ、私は実際に出来てくるまで、どうなるかが全く分からなかったところに不安がありましたが、石川さんを見ていると、不安を感じている風が全くないんですね。

石川:私の中では、完成形が頭の中ではっきりと見えていたからでしょうね。

相場より高い家賃で入居が次々決まる理由

石川:丸山ハイツは、19部屋がすべて違う仕様になっています。
通常であれば、物件は上の階や角部屋から埋まっていくものです。ところが、1Fにテラスとお庭をつけたことで、1Fの部屋から先に入居が決まっていきました。立地的に、物件裏に小学校もあり、子どもが遊べるスペースがあるお部屋がファミリー層に気に入っていただけたんですね。
今までなら、下のお部屋は人気がないから、家賃を安くしてくださいとなる。でも、家賃を一度下げると、上げることはできません。家賃を少しでも高くつけたい、そのためには付加価値のある仕様が必要なんです。丸山ハイツはそこにこだわって、家賃も相場より割高ですが、次々に入居が決まっています。

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よい物件には、よい入居者が集まる

石川:先日、マンションの廊下のところで、木材で大工作業をしている人がいて、てっきり作業員かと声をかけたところ、ご入居いただいたばかりの方で驚いてしまいました。
聞けば、ストレージルームにタイヤを収納するのに、簀の子を手作りしていたとのこと。お部屋が素敵だから、こうした作業を思わずしたくなってしまうという話を聞いて、いいお部屋を作れば、自ずと店子さんも良い方が集まるのだなと感じています。

まだ入居は始まったばかりですが、こういう物件に魅力を感じて集まる方々は、それぞれに「こだわり」という共通項があると思うんですね。ですから、単に住んでいるというだけでなく、横のつながり・コミュニケーションがある物件になるのではないでしょうか。
今後は、入居者同士の会食やBBQも企画していきたいと考えています。

賃貸物件リノベーションを検討している方に伝えたいこと

押尾:今回のリノベーションを通して強く思うのは、やはり「住む人のことを考える」ということの大切さです。
この物件はファミリータイプなのですが、家族ということは複数の人が住む部屋ということですね。
単なる箱をつくるのでなく、そこでどういう生活をするのかを想定すること。「住まい手目線」をどこまで、どういう風に考えられるのかで、成功が決まるのではないかと思います。

石川:そして、お引渡してちょうど35日目に、なんと19部屋すべてが満室になるという、驚きの結果が出ました。
押尾オーナーから「おめでとう」と電話をいただいた時、2年半かけたプロジェクトの結果を出せたというホッとした思いと、仲間たちとよい仕事が出来たと嬉しさが込みあげてくる、最高の気分を味わえました。

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