フィルとティモシーの横濱アパートメント物語002 フィルFile01
フィルFile001『父の寝室』
フィルは父のサイモンの寝室に呼ばれた。
サイモンは今、先代から譲り受けた3つの土地についていろいろと
考えていたのだった。
サイモンはフィルに
「お前も知ってると思うが、ミハイルにある3つの先祖代々伝わってきた土地は今、
アパートメント・駐車場・畑として使っている。
私の父、お前のおじいちゃんから私が譲り受け、それなりに資産の組み換えをしながら今に至っている。
今まではよかったが、これからは大変になると思う。
そこで、お前にウチの不動産のコトをいろいろと手伝ってもらうと共に
色んなことを学んでもらいたいと思っている」
そのような話を父のサイモンから聞かされたフィルは瞬間的に
「いゃ〜参ったなぁ。
今期から部下が2人増え、仕事は今以上に忙しい状態だ。
もう少しこの話は先かと思っていた」と言葉には出せないが心の中でそう思った。
顔色の冴えないフィルに向かって、サイモンはゆっくりベッドから起き上がり
「どうした?」
フィルに向かって問いかけた。
「いや、いずれそんな話が出てくるかと思っていたんだが、こんな早くそれが来るとは思っていなかったから…」
「でも、いずれはお前が見なくてはいけない不動産たちだぞ。
今から少しずつ学んでおいてほしいんだ」
サイモンはそう言いながら1つのメモを出した。
「ウチなりのルールとしての、不動産経営における海図と羅針盤だ。
一度見ておいてほしい。
そしてそれを早くお前に伝えておきたいんだ」
サイモンの真剣な表情からフィルは断ることが出来ず
「うんわかった。これから少しずつお父さんの話を聞こうと思う。
とりあえずは仕事も忙しいので、週一回、毎週土曜日の夜にやってくるから安心してください。
だからお父さんも身体を大事にしてね」
と父のサイモンを安心させたいと思って言葉をかけた。
「お父さん、お客さまですよ」
母の言葉で今日の話し合いはここで終わった。
玄関で丸メガネをかけたジョン レノン風の父の友達に挨拶をし、実家を後にした。
サイモンのほうは、
「やれやれやっとこの話を息子に伝えられた」
と胸を撫で下ろすのだった。
「ほんとに参ったなぁ。
これからどんなことが起きるんだろう」
フィルは厄介な仕事が1つ増えたような気がした。
HONESTY ALWAYS COMES FIRST