「カーサベリーニ 設計者インタビュー【株式会社LAN 下村智紀氏】
女性専用マンション「カーサベリーニ」設計者で、一級建築士・インテリアプランナーである、新賃貸アライアンスチーム株式会社LAN代表取締役 下村智紀氏にお話をうかがいました。
日常の探求は常に仕事へとつながっている
子供のころから図画工作が好きで、遊びとして絵を描いたり、段ボールや廃紙でものをつくったり、自分の原点にはそのような部分があったと思います。
そこから始まって、いつしか衣食住の「住」の部分を担う空間の構築に興味を持つようになり、今日に至っています。
「世の中のあらゆる空間やディテールを興味深く探求する」。
それは、雑誌であったり、映像であったり、ネットであったり、実際に行ってみたり、手法はさまざまですが、日常生活の中で、ビジネスにおいてもプライベートにおいても、意識がいつもそこにあります。
自分の仕事はプライベートとの垣根がなく、仕事が趣味で、趣味が仕事。その結果、クライアントの喜ぶ姿が見られたときが、最高に幸せです。
クライアントの思いを最大限に具現化する設計を大切に
新しい作品を手掛けるときにまず考えるのは、その場所が、誰が、何のために、どのように使うのか。住居、店舗、工場、事務所 何をつくり、誰が使うのか?
そこがわかったうえで、そのために必要十分な条件は何かを考えていきます。
衣服に例えれば、既製品を作るのか、パターンのオーダーメイドか、フルオーダーメイドか。
その土地のロケーションと法的な制約のもと、クライアントの思いを最大限に具現化することが大事だと思っています。
木造デザインをRCで表現する難しさ
「カーサベリーニ桜丘町」の設計では、プリマ風のRC賃貸マンションが、最初のキーワードでした。
渋谷駅の近くでありながら閑静な住宅街という好立地でしたが、狭い前面道路と傾斜地という厳しい条件がありました。さらに、自宅+賃貸スペースを最大限に確保しつつ、木造プリマではない耐火建築物として、ヨーロピアンアパートメントのデザインをどう生かしていくのか。その部分が、最大の難題でした。
模索のうえ辿り着いたのが、「レンガ」、「モールディング」、「アイアン手摺」を要素として、そこにRCの打ち放しを織り交ぜることでした。
実際の素材としては、レンガはレンガ風タイルに、1階部分は石積み風ブロックタイルになるため、素材選びではデザイン性の再現のために現場に見本を取り寄せるなど、その選定に苦慮しました。
結果として、オーナーに喜んでもらえる仕上がりとなったことはうれしく思っています。
「住人十色」がキーワードの住空間を提案
設計者として、賃貸住宅設計の次の一手として考えているのは、プリマのようにピンポイントな需要を発掘して、新商品を開発することです。
プリマは「ヨーロピアンアパートメント」というデザインコンセプトの商品ですが、それとは別な、シンプルモダン、和モダンなどを考えていきたい。
「住人十色」をキーワードに、いろいろな趣味嗜好の人、ライフスタイルの違いに対応する住空間の提案を目指します。
これからの賃貸市場では、賃貸に住む人の指向性がより強くなると思います。
そこに箱(家、部屋)があるから住む、便利なところだから住むという時代から、人とは少し違うところに住みたいという時代が来ている。
すでに、普通の箱は余っています。奇抜な箱も一時は目を引きますが、住みにくくて続かないか、飽きられてしまう。
たとえ立地が不便でも、自分の生活に必要な要素がそこにあるから住みたいというような、多様化したニーズにどれだけ合わせられるか? そこがポイントの一つと考えます。
そしてもう一つのポイントは、プリマのように、女性の好むものでなければならないということ。住まいにこだわりを持つのは、男性よりも女性です。
どんな個性的な特徴を持たせるにしても、そこには必ず女性目線がないとだめで、そこが大切なポイントになると思っています。