フィルとティモシーの横濱アパートメント物語 015 フィルFile05
1人で来るのが嫌だったから幼なじみを誘ったんだ
金曜日の夕方、アンティパトリスの坂はつらさを感じさせない景色の良い坂だった。
これからドラゴンが毎週行うドラゴンソリューションカフェというイベントに向かうところだ。
フィルの隣に歩いているもう1人の若者はトムと言う。
1人で来るのが嫌だったからフィルは幼なじみのトムも誘った。
トムもフィルと同じで、先日父親からインターのそばにある古いボロアパートメントをそろそろみろと言われていたところだった。
アンティパトリスの坂を登り終わる頃
「ちょっと済みません」
若い女性から声をかけられた
「すいませんこの地図にあるコワーキングスペースもうこの近くですかね?」
彼女は偶然にも、これから僕らが参加するイベントのメンバーみたいだ。
「ドラゴンのイベントですよね。
私たちもこれから行くのでよかったら一緒に、もうこの坂を上がったところですよ」
「あっ、そうですか、それではお言葉に甘えて…」
そんなことをしながらフィルたちは坂の上のコワーキングスペースについた。
「いらっしゃい、どちらのスペースですか?」
店員風の女性から声をかけられた。
多分ドラゴンのアシスタントの人だ。
「ドラゴンのイベントです」
トムが言うと
「ドラゴンソリューションカフェのお客様ですね。こちらにどうぞ」
と言われてタイトスカートとハイヒールの似合うアシスタントの靴音のあとについていった。
案内されたのは10人くらいの入れるミーティングルームだった。
中には、
いかにも人生経験を積んできたと思われるナイスミドルな男性
こちらに向かって優しく会釈をしてくれたマダム
いかにも緊張マックスとわかるスーツを着た若者
この人たちの囲んでいるテーブルに3人も座った。
一体これからどんなことが起こるのか
フィルは2年後の自分が想像できない所にいる。